ノギスの校正を行う際には測定室の温度と湿度の管理が大切

精密な計測器の取り扱いが慎重になるのはなぜか

ノギスは、設計図面に基づいて加工された対象物が、その長さや深さ、厚さが期待される寸法であるかを測定する際に用いられる計測器です。この計測器は、高精度な工業製品のモノづくりの現場で、欠くことのできない、また、よく目にするポピュラーなものと言えます。精度が求められる計測器ということもあり、その扱いには注意を払う必要があります。例えば、先端部分では対象物を挟んで寸法を測定する構造となっていて、繰返しその部位を使用して測定することで、僅かに摩耗や歪みを生じるそうです。また、実際に使用していく中で、床に落としたり、工作台などの堅い構造物に強くぶつけたりといった物理的な衝撃を与えたり、または、作業室内の温度差が大きい場所、湿度の高い場所での使用や保管、粉塵が舞うような作業環境下での使用といった、環境に起因する場合も想定されることから、注意が必要なケースと考えられます。

日常的に使う計測器によるモノづくりへの影響

日々のモノづくりで、ノギスを使って工作物の寸法を計測することは、よく行われていると言えるでしょう。しかし、モノの長さをいつまでも精度が変わることなく計測することはできないのが現状です。使用状況次第ではありますが、本体に物理的な衝撃を与えたり、温度や湿度による本体材料の膨張収縮や材料の化学的変化による影響が、測定精度に反映してしまいます。計測の精度が落ちた状態は、企業にとっては不良品が出てしまう確率が高くなり、結果的に歩留まりに影響を与えかねません。また、出来栄えの良くない製品を市場に出荷してしまうことは、企業の信頼度低下という残念な状況を招きかねません。また、品質検査の段階で精度の良くない計測が行われることで、歩留まりの低下、製造ロスの発生など、経営上のリスクとなり得ると考えられます。そのため、このような精密な計測に使われる器具については、定期的な校正を含むメンテナンスの実施が望ましいとされています。

管理された測定室でのメンテナンス作業

ノギスの校正では、長さに関する国家標準器にトレーサビリティが確保されているブロックゲージや段差ゲージなどを用いて、どの程度の測定誤差があるのかを確認することになります。この校正を実施する際に、作業を実施する測定室内の温度と湿度の条件を設定して、その条件下で誤差の有無と程度の確認を行っています。これは計測器自体が温度や湿度に対して敏感で、計測結果に影響が出てしまうことに起因しているためで、誤差の確認作業において、正確に計測することが求められるためでもあります。更に、この作業の実施に併せて、明らかとなった計測器の持つ誤差を修正するため、メンテナンスを実施する場合があります。この作業は、計測器本来の性能を発揮するよう、誤差に応じた修正を施します。このようなメンテナンス作業を定期的に行うことで、より良いモノづくりができ、最終的に製品品質を担保し、企業の市場での信頼につながっていくと言えます。

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