精密な寸法測定を継続的に実現するために必要なこと
ノギスは、主に金属加工製品のように、高い寸法精度が求められるようなものの長さ、厚さ、深さに関する寸法測定に用いられます。正確な寸法測定をする場面で使われる計測器の扱いは、特に注意を払う必要があります。例えば、先端部分にある外側用ジョウや内側用ジョウ、デプスバーは、測定対象物に直接接触させて使うため、繰返し測定することで、僅かに摩耗や歪みを生じることがあります。また、床に落とす、工作台などに強くぶつけるといった物理的に衝撃を加えること、作業環境の温度、湿度が一定ではないことや、粉塵が舞うためスライダの摺動面に付着するなど、計測器の使用状況としては望ましいものではない中で長年使われ続けることが、徐々に測定誤差が大きくなることに影響することがあるようです。そのため、測定精度を維持するためには、日常管理や校正を含めた定期的なメンテナンスが重要となります。
日常状態を把握することと定期的メンテナンスの必要性
測定精度を維持するためにノギスを管理していくことになりますが、大きく分けて二つのポイントがあると言われています。一つは、毎日の作業開始前に日常点検を行うこと、もう一つは使用頻度などに基づいてある一定期間ごとに、計測器の校正を行い、必要に応じて測定誤差を修正するメンテナンスを実施することです。モノの寸法を正確に測ることは、加工作業中や検査工程といったものづくりの現場で、常に実施されていることです。しかし、いつまでも当初の測定精度と変わらない状態を維持することは、先にも説明した通り、種々の要因から難しいことがわかります。寸法を正確に測ることができない、すなわち誤差が大きくなり精度が落ちた状態は、設計図面にあるとおりの寸法のモノが作れないことになります。そのため、製造業の工場などでは日常管理と定期的なメンテナンスの双方を実施することで、実際に対応しているようです。
始業時に確認するポイントと定期的に確認するポイント
ノギスの日常管理では、スライダの動きにムラがないかということ、本尺の目盛りとバーニヤの目盛りとを合せて0点がとれていること、外側用ジョウがきちんと閉じること、標準面を垂直に立てて、デプス測定においても本尺の目盛りとバーニヤの目盛りとを合わせて0点がとれていることが主な確認点とされているようです。また定期的な校正及びメンテンナスでは、長さに関する国家標準器にトレーサブルなブロックゲージや段差ゲージなどを用いて、計測器の持つ誤差がどの程度なのかを確認します。更に確認された誤差を修正するためのメンテナンスを実施する場合があります。主に前者については企業において実施される内容で、後者については専門業者において実施される場合が多いようです。以上のことから、計測器本来の性能を発揮するように対応することが、製品品質や製造業としての市場での信頼につながっていくと言えます。